「私にしかできない」プロジェクトストーリー

中南米市場開拓プロジェクト

中村 伸義

たった一人で始まった、“年間売上20億円”への道。

中村が在籍するパフォーマンスケミカル部(取材当時)は、おもにポリウレタンを扱う部署。“硬質”と“軟質”に大別されるポリウレタンの中でも、中村はクッションや枕に使われる“軟質”のポリウレタンフォーム原料の輸出入、三国間取引に携わっていた。蝶理の化学品ビジネスの一翼を担う同課では、近年1つのキーワードがテーマとなっている。“脱中国”である。「これまで同様中国のシェアを伸ばすと同時に、より成長率の高い地域へアプローチするため、課としては数年前から脱中国を本格的に意識し始めていました」。当時、台湾での海外研修を終え、帰国したばかりの中村も、自然と中国以外のエリアで新たな商流を創り出すことを考えるようになったという。そんな中で目をつけたのが、中南米だった。「まず、市場が大きかったんです。軟質ポリウレタンの主原料であるイソシアネートの世界全体の需要がおよそ200万トン。中国で約50万トン、日本は約6万トンです。それに対して、中南米ではブラジル1カ国だけでおよそ10万トン。さらに経済成長率も年間4〜5%と非常に勢いもある。可能性を感じました」。また、ビジネスができる下地もあると感じていたという。「スポット的な小口の取引を通じて、対応が想像以上に丁寧な印象を受けていました。契約もきちんとするし、仕事にも抜かりがなかったんです」。後に最大で年間およそ20億円を見込むこととなるプロジェクトは、こうして始まった。

15,000kmを超える、信頼関係をつくれ。

東京から15,000km以上、日本から見て地球のほぼ真裏にあたる中南米地域との取引では、現地でのパイプ役を努めてくれるエージェントの存在が不可欠である。商社を始めとする多くの企業からの仕事を請け負う彼らに“信用”してもらうことが、まずは第一歩だった。「彼らもビジネスをしているわけですから、彼らにとっても、しっかり利益となる商売をすることが大切です。そのため、タイミングを見ながら複数ある商材で利益を調整することもしましたし、意図的に価格を下げて出すといった戦略もとりました」。また、彼らの信用を得るために不可欠だったものが“情報”。「その国にどれほどの需要があるのか。それを供給するためにどこから買っているのか。サプライヤーの方々の特徴、価格のつけ方など、ありとあらゆるビジネス環境のデータを調査・収集し、彼らと共有しました。また、需給バランスは常にキャッチアップして、買い時や売り時の情報もいち早く提供。そうして少しずつ関係性を構築していきました」。そうした多くの情報を、いかにして手に入れたのだろうか。「外務省の公式情報を入手したり、お金を払って購入したり。あとは現地に精通した方々とコンタクトをとるなど、色々ですね」。関係性の構築はやがて実を結び、ついに飛躍するきっかけを迎えることになる。

開拓の原動力は、情熱だった。

“毎月、安定して500トンほどの取引を”というのが、課として予算や人を割くことの出来るおおよその目安。個人で中南米に目を付け、少しずつ歩みを進めてきた中村にとって、このラインを上回ることがまずは1つの通過点だった。
そのきっかけは、思いがけず訪れたという。
「上手くいった要因は本当に様々で、国内市場、顧客について徹底的に調べあげた事はもちろんですが、その他に“同業他社の窮地を救った”出来事がありました。この業界はシビアで世界各国の競合メーカーとの競争、資金回収の問題など様々なハードルがあります。ちょうどその時も、軟質フォームのもう一つの主原料であるポリオールを生産する中国メーカーが、出荷した貨物が洋上にある状態で顧客から契約をキャンセルされる出来事がありました。1週間後には目的港に到着するという緊急事態だったのですが、その情報を聞きつけた私たちが、物流業社、販売先との話を纏め、どうにか窮地を脱することができました。この中国メーカーとの取引はこれが初めてだったのですが、この出来事をきっかけに今に至るまで毎月安定的に商売を続けてもらえるようになりました。」
結果、中南米は同課の取引の10%を占める地域にまで成長。最大で年間20億円を見込めるまでになった。たった一人でスタートしたプロジェクトがここまで成長した理由を、中村は“情熱”にあると話す。「商売を始めた当初、中南米はまだ未開拓のエリア。従って、テクニカルな話よりも“やりたい”“やる自信がある!”という想いが大切だったんです。もちろん、数値や経験をもとにしたロジックはありましたが、それ以上にそうした情熱で周囲を動かせた部分が大きかった気がしますね」。今後は、より世界的な市場のネットワークづくりにも携わりたいという中村。彼の挑戦は、まだ続きそうだ。

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